クロスロード・ブルース

シリーズ日本の無職。

本日も短期バイト。南町田の交差点で看板を持って立つ。
場所を動かず待ちに徹する。平均10組の通行人にチラシを渡す。3組をモデルルームに案内する。「どこですか」と問う人がいる限り、バイトの日給は保証される。

「知らない人や知らない通りを見るのは嫌いじゃない」と書いたが、誰とも話さずにずっと立っていると磨り減る。摩擦がない仕事で「磨り減る」というのも妙な話だが、ストレスレスな環境が奪って行くものは確かにある。
例えば会話能力。さっき「ありがとうございます」と「すみません」を間違えた。定型の文章以外口から出なくなってくる。

それから輪郭。口も手足も動かさず目だけで得たものがどれだけ正しいのか分からなくなる。自分の見たものを確かめたくなって、ポケットの中でこっそりメールを打つ。「こんなの見ました」とか「暇です、お題募集」とか。でも、相手が同じ物を見ているわけないし同じように暇なわけない。
変なメール送ってしまったなとか寂しいんだろうとか働けとか暑いとか。頭の中がぐるぐるしたまま正午。