[感想]カフェ・イン・水戸
水戸芸術館に行ってきた。
金融機関が多いこぢんまりとした街で(八王子に近いかも)駅からどこに行くにも登り坂。
イチハラヒロコの言葉が垂れ幕になってデパートの壁面に掛かっている。

「もうなかなおりしよう。」
「この愛でいいのか。」

白地の布に極太ゴシックの黒で書かれた文字はいやがうえにも目を引く。
水戸を行き交う人達はこれを見て誰かの顔が浮かんだり、ドキッとしたりするのだろうか。
毎日見ているとやっぱり慣れてしまうのだろうか。

初めての水戸芸術館
イチハラヒロコに加えて巨大バッタなど、横浜トリエンナーレを思い出すラインナップ。懐かしい。

徐水(正しくは「にすい」に水)
「Classroom Calligraphy」
ローマ字でできた架空の漢字で習字をする。
表意文字のような表音文字を筆書きする楽しみは、小学生が読めないけど何だかかっこいいからと教科書やノートに無闇にアルファベットを書き連ねるのと同じようなものなんだろう。

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特殊な床を通り抜けると、自分の歩いた部分が兎、猪、猫など動物の足跡になって追いかけてくる。
分かったのは、見たことのないものを想像することはできないということ。同じ動物の足跡でも、どんなものを想像するかは人それぞれだということ。
猫の足跡を見て三毛を浮かべる人もいればヒマラヤンを浮かべる人もいるし。
隣は何を思うのだろうと考えることが面白い。
そこにないものをどこまで鮮明に思い浮かべることができるだろう。想像力をたくましくしよう。

獅子倉シンジのバケツ作品
「バケツ・キック!ver.ワールドカップ
バケツを積み重ねて作った壁をサッカーボールで壊す。撮影は横浜の街中で、ゲリラ的な行動に驚く人達の顔がいい。

展示室に設置された「バケツ・コスプレルーム」で色とりどりのバケツやパイロンをかぶり、ポーズを取り合う。知らない人にぱっと見せたい。驚く顔が見たい。

高木正勝「Light Park」
展示室の壁面3面の映像を見ながら展示室中央のブランコをこぐもの。
映像(僕の時は宇宙だった。他のタイプもあるそうだ)とシンセサイザーにあわせてブランコをこぐのがただ気持ちよい。光と音がある喜び。

この展覧会には参加型作品が多く、予備知識なしに足を運んでも楽しめるものになっていた。
芸術鑑賞よりも遊びに来る感覚で中高生に足を運んで貰えればと思った。
作品が退屈で難解なものばかりじゃなく美術館が特別なところじゃないと早いうちに知ることができればいわゆる芸術へのアレルギーが軽減し、授業も嫌な顔をせずに受けられるかもしれない。趣味の幅も広がるだろう。そういうのに敏感な若い人が増えていったら、もう少しアート周辺も風通しが良くなるかもしれない。

水戸市内に仕掛けた展示について。商店街にアートが現れた数ヶ月間、街行く人々はどう反応していただろう。広告と同じように思うのだろうか。客寄せにはなるが商品購買には全く絡まない物が置かれていることを、商店主はどう感じただろう。また、展示する側はなぜその場所に置こうと思ったのか。
色々と知りたい。聞いてみたい。


夕方、常陽銀行のATMで封筒(これもイチハラヒロコの作品だ)をもらう。
「この世につまらん仕事なし」
噛み締めよう。