なくて七草

せりなずな
ごぎょうはこべら
ほとけのざ
すずなすずしろ
これぞ七草

言わずと知れた春の七草の覚え方である。皆さんはフルセットの七草粥を食べたことがあるだろうか。祖母、曾祖母と同居していた方は経験があるかもしれないが、僕には一度もない。子供の頃は三つ葉と玉子の粥だった。
「ねえ七草はー?草ないよー」
「黙って食べなさい」
毎年そんな会話をしていた。ずっと謎だった。買い物に行き献立を考えはじめたころ、ようやく謎は解けた。入手できないのだ。せり、すずな(蕪)、すずしろ(大根)はともかく他の4つは日頃から売られている物ではなく、いっそ近所の公園に行ったほうが確実にゲットできる代物なのだ。

が、ここで再び疑問がわきあがる。現代において商品になりえないものを食べても大丈夫なのか。だいいち「ごぎょう」とは何か。

素直に辞書に頼ろう。カモン大辞林
なずな なづな 【薺】
アブラナ科の越年草。畑や道端に多い。高さ10〜40センチメートル。根出葉は羽状に分裂。春、茎頂に長い総状花序を立て、四弁白色の小花をつけ、のち扁平な三角形の果実を結ぶ。春の七草の一。果実は三味線の撥(ばち)に似、茎から少しはがして垂れ下げ、くるくる回すとペンペンと音を出すので、バチグサ・ペンペングサともいう。[季]新年。〔「薺の花」は [季]春〕

ごぎょう ―ぎやう 【御形・五形】
ハハコグサの異名。春の七草の一つとしてあげるときにいう。おぎょう。

はこべ 【〈繁縷〉】
ナデシコ科の越年草。日当たりのよい草地・畑などに多い。茎の下部は地をはい、よく分枝する。葉は対生し、卵円形。春、枝のつけ根に白色のごく小さな五弁花をつける。小鳥の餌(えさ)とする。春の七草の一。ハコベラアサシラゲ。[季]春。

ほとけ-のざ 【仏の座】
(1)キク科のタビラコの別名。春の七草の一。
(2)シソ科の越年草。道端や畑などに自生。高さ約20センチメートル。葉は対生し、半円形。春、葉腋に紅色の唇形花を数個ずつ輪生する。カスミソウ。サンガイグサ。

たびらこ 【田平子】
(1)キク科の二年草。田の畦(あぜ)などに生える。根出葉はロゼット状で地に平らにつく。春、高さ約15センチメートルの花茎を数本出し、黄色の頭花を数個つける。若い葉をつみとって食用にする。春の七草ホトケノザは本種をさす。コオニタビラコ
(2)キュウリグサの別名。

一番縁起物の色合いが強いほとけのざが食用できた。だが、あとは全滅である。そればかりかペンペン草や小鳥の餌がラインナップに含まれていたとは。本物の七草への道は遠く険しい。

■追記
昨年はフリーズドライの七草セットに頼ったが、これは本物とは言い難い。今年はセット売り切れにつき葱、三つ葉、大根の三種混合一草粥を家人に提供。