ピーマンこわい

ピーマン。唐辛子の甘味種で球形のものと定義されている。
ピーマンと唐辛子を並べても仲間である実感はあまり湧かないが、ししとうハラペーニョを間に置いてやると「あ、なるほど」という気分になる。
気分にはなるが、緑色のピーマンが唐辛子の仲間であることを実感することはあまりない。その最大の特徴は苦みであり、辛さではないからだ。

しかし、僕は両者の関係を体で理解することになる。

一年ほど前のこと。僕はサティの野菜売り場で変わった野菜を物色していた。レイシーはこないだ試したし、米なすはしぎ焼きにした。アボカドは今食べたくないし。

ん?

新製品発見。

「甘辛ピーマン 煮物、サラダに」

通常の1.5倍ほどの大きさで濃い緑色のピーマンが袋に詰まっている。
はじめて見るが、意外と安い。
よし、買おう。新規開拓。今日はスパゲッティとグリーンサラダだ。

他の食材も買いこみ、家に帰って調理開始。
大鍋の中で麺が揺れている。
もうもうと蒸気が立ち上る。

今のうちにさっきの野菜を刻んでおこう。

ピーマンを半分に切ったところで目が痛くなる。
どうしたんだ?
負けずに千切り。ファミレスでバイトしていたので、これだけは自信がある。
千切りが終わる。目だけではなく鼻と頬までひりひりしてくる。
絶対にピーマンのせいだ。

左手でごしごしと顔を拭うと火がついたように顔全体が痛くなる。中でも目と鼻の痛みがひどい。粘膜が完全にやられた。持ち場を一時放棄し、洗面所に退却。手と顔をざざっと水で洗ってしのぐが、まだ痛い。

トイレに行って一息入れよう。


あ、痛!いたたたたたたたた!た!
ねんまく!ねんまく!ねんまく!
ぐがががあああああああああああああ!

そうこうしているうちにスパゲッティはやわやわに伸びきって作り直す羽目になり、「サラダと煮物に最適」な甘辛ピーマンは舌が痺れるほど辛く、誰も手をつけることなく捨てられていった。
ピーマンが嫌いなのは子供だけではない。